【Age of Networks(AoN-DB)え~ちゃんぶろぐねっとわ~く】【脱稿】君待つ花 2/5

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【脱稿】君待つ花 2/5

【新呼球関係者公開】

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<幽香サイド>


あの薬師も何を考えているのだろうか!
確かにメディを彼女達に預けたのは私。
でも、メディを譲ったつもりはない。
彼女は私の……!

とまで考えて、私は考えるのをやめた。
この風見幽香ともあろう者が、どうして一妖怪の為にこれほど気を張らなければならないのだろうか。

むしゃくしゃした気持ちを抑えつつ、気分転換に道を変えて花畑に戻ろうか。
そう思った時、何やら香ばしい香りが鼻腔をくすぐる。
アレは確か、若い妖怪が最近始めたとかいう『屋台』とかいう店か。

「邪魔するわ」

ぶらり、と足先をそちらに向けて暖簾をくぐった私に見えるものは珍しいものを見るような目。
奇異の目で見られるのは慣れないが、こんなイジメ甲斐のない小妖怪など相手にする気もなく、目の前のカウンターに肘を付いて駆けつけ一杯を注文する。

「私ので良ければ」
「どうも」

項垂れた頭を声に向けると、見ていて不快になる顔が柔らかく微笑みかけていた。

「八雲紫……!」
「まあまあ、そう怪訝になさらずに。女将! 私にも一杯」

女将とやらは、手馴れた手つきで燗二本と串二本を出す。
歴が長いのだろう、手には幾つかの火傷の痕跡が見られた。

「気前良いのね」

言葉もなく項垂れた。


幻想郷の大妖怪二人が肩を並べて杯を交わす。
その様子があまりにも奇妙だったのか、周りの客は皆急ぐように帰って行った。
静まり返る屋台。
気づけば、女将の姿もない。

「迷惑じゃなくて?」
「違うわよ、きっと」

上機嫌に飲み干す。

「貴女も、何かあってここに来たんじゃないかしら?」
「……ふん。知った風に」
「いいえ、存じませんわ」

とぽとぽ、と猪口に注ぐ。
私の杯は最初の一口から進んでいないと言うのに、賢者サマはどこまで暢気なものか。

「折角なんですし、口になされては? よろしければお注ぎ致しますわ」
「結構」

催促されたようで気に入らないが、飲まねばこの妖怪は私を帰そうとはしないだろう。
また八雲紫に、か。とても良い気分にはなれそうにない。
流し込んだ酒はただ熱い。

「良い飲みっぷりですわ」

どこまで逆撫ですれば気が済むのか。
私にも、何故こいつと酒を酌み交わしているのか解らない。

「……ちょうど、貴女と同じ事を藍にも抱いた事がありましたわ」
「!?……何が言いたいの?」
「子育て、というのは経験がないと常に不安が付きまとうものですわ」

心で舌打ちする。こいつはいつも解った風な口を叩く。
読心術の類なら簡単に使えそうな、恵まれた能力で幻想郷の賢者を称するような者と、力で捻じ伏せてきた私では相容れないのだ。

『やはり来るんじゃなかった』

私は、お代を置こうとして、甲に冷たさを感じて睨み付けた。

「今日は争う気分ではありません。そう猛りなさらず」

不気味な奴だ。今日はやけに絡みたがる。
苛立ちをなるべく抑え、促されるままに席に付いてやる。

「思いの外、自立が早かったのね」

――煩い。

「彼女は、優秀な妖怪になるわ」

――知った風な口を利くな。

「……そんなにアリス・マーガトロイドが信用出来ない?」

こいつは―。
思わず腕に力が入ってしまった為か、猪口が私の指の間で悲鳴をあげた。
カウンターが激しい太鼓音を轟かせて、八雲紫を恐慌せんばかりに眼光をぎらつかせる。

「信用? 孤独を生きる妖怪が何を言うかと思えば!」
「アリス・マーガトロイドは信用できずとも、彼女は信じてあげてもいいんじゃないかしら?」
「このまま帰すつもりはないんでしょう?」

「メディは……メディスンは、まだ経験が浅い妖怪。疑う事を知らない。
 狡猾な人間の姦計に踊らされ、恨みを残したままだと消滅させられるのは目に見えている。
 ……仲間が人間如きに負けるのを見るのはあまり気分が良くないわ」
「お優しいのね」
「寝てばかりだった貴女とは違って、私は人脈が広くてね。
 発狂した子を護る為とは言え、愚かな人間どもを庇うようにして仲間に恨まれた事もあったわ。
 私を慕う子が私を恨むのは勝手だけど、私を慕ってくれた子が人間どもに虐げられるのが許せないだけよ」
「それは貴女の為? それとも幻想郷の為?」
「どちらでもないわ。貴女の創った幻想郷は貴方の為でしかない。
 私は在るべきところの在るべきものが、他者に塗り替えられるのが気に入らないだけ」

八雲紫は頷いて、自身の猪口を空ける。

「……アリス・マーガトロイドは信用出来ないのね?」
「随分と粘るじゃない。お気に入りなの?」
「いいえ。この状態は幻想郷にとっては良い方向に向かう事につながる。
 私はその芽を摘みたくないだけよ」
「メディスンが人間を恨まなくなって、逆上して人間どもの巣に毒霧を散布する事がなくなる事でしょう?」
「それもあるけど、本質はそこではないわ」
「何が目的?」
「……そうね。経験者の誼で教えて差し上げましょうか」

彼女の眼が、声が、表情が。
初めて私を意識するものに姿を変えた事に気づく。
私は、何も語らない妖怪の思考の一部を垣間見た。

「あの子は自身でも外部からでも、少しの危険で幻想郷にとって脅威になる。娘に、と想う幼い妖怪を地下に貶めたいのかしら?」
「私はあんたにとって体の良い監視役というわけ?」
「表現を柔らかにしていただきたいわ。同族を地下送りにする事が辛いのは貴女だけではないのよ」
「リグル・ナイトバグの時のように? 私に尻拭いをしろと云う事かしら?」

八雲紫は何も答えず、代わりに女将を呼ぶともう一合、燗を足した。

「堅い事は抜きにしましょう。純粋に貴女に協力したいという、私の意志なんですから」

口調は戻っていた。
私は、永遠の好敵手に絆された事に多少の敗北感と不思議な満足感を覚えつつ、添えるようにつけられた新しい猪口に胸より熱い一滴を注ぐ。

燗の傍にもう一本、灯る火色の身に、香ばしいタレの湯気を上げる八目鰻が添えられていた。


『表の幻想郷の母として、あの子達の面倒を見てあげてね。頼んだわよ――』


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